透明ポリマーの屈折率制御が重要な技術課題となっています。ポリマーの屈折率は、分子鎖のパッキング状態と化学構造で決定されます。我々は、Lorentz-Lorenz式に基づき、ポリマーの繰り返し単位の化学構造のみから屈折率およびその波長依存性(アッベ数)を計算する方法を提案しています。提案している屈折率予測法を、様々な化学構造、結合様式をもつ光学ポリマーに対応できるように発展させることを目的に、屈折率を計算する際に基盤となる原子屈折、原子分散値および“ポリマー固体中での分子鎖パッキング状態を決定、解明していく研究を行っています。
ポリマーの高透明化のためには、化学構造と高次構造の両面からの制御が必要です。非晶性の透明ポリマー固体に数十ナノメートルのオーダーの屈折率の不均一構造が存在する場合、この不均一構造により光が散乱されます。散乱の面からポリマーを高透明化するためには、不均一構造の大きさと屈折率差を小さくさせる高次構造制御が必要です。透明性を阻害する非晶性ポリマー固体中の不均一構造の原因を解明し、光学ポリマーの高透明化のための構造制御法についての知見を得るための研究を行っています。また、ポリマーの本質的な透明性と化学構造との定量的な関係を明らかにし、透明ポリマーの本質的な透明性を化学構造のみから定量的に予測する透明性予測システムの構築を行なっています。
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)などの非晶性透明ポリマーは、ガラス状態では熱力学的に非平衡な状態であり、Tg付近の温度では体積やエンタルピーなどの熱力学量が緩和し、化学的な変化を伴わない物理的エイジングが起こります。エイジングがポリマーの光学特性に及ぼす影響について研究することは、ポリマーを光学材料へ応用する場合の、光学特性の安定性・信頼性を吟味する上で重要です。エイジングにに伴う光学特性(屈折率、複屈折、透明性)の変化について研究を行っています。