本文へスキップ

大越研究室は高分子の液晶性とキラリティを利用したナノテクノロジーを研究しています。

TEL. 0123-27-6084

〒066-8655 北海道千歳市美々758番地65

研究テーマCONCEPT

研究テーマ

1.剛直棒状高分子が示す、ネマチック、スメクチック、カラムナー相を含む液晶相転移の発見

(Macromolecules 2002, 35, 12, 4556-4559; Liq. Cryst. 2004, 31, 279-283.)

 これまで、単純な棒状分子が排除体積効果だけで、ネマチック相やコレステリック相さらにはスメクチック相やカラムナー柱状相などの液晶相を形成し、段階的に構造発展する事が、力学モデルを用いた理論計算により予測されている。本研究室では、非常に剛直ならせん構造を形成する事が知られているポリシランやポリペプチドに、長鎖アルキル基を導入する事によりサーモトロピック液晶性を付与し、分子量分布を非常に狭く制御する事により、低温側からカラムナー相−スメクチック相−コレステリック相という、理論的に予測された相系列が再現する事を見出した。(Figure 1)




2.側鎖に光学活性アミノ酸残基を有するらせん状ポリアセチレンの示す液晶相の発見

(Macromolecules 2005, 38(10), 4061-4064; Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 8173-8175.)

 らせん高分子は、立体的に込み合い、規制されたコンホメーションを取るために剛直棒状の形態を有し、このため主鎖全体がメソゲンとして機能し、液晶を発現することが知られている。応募者は、光学活性なアミノ酸からなる側鎖を導入したポリアセチレンが一方向巻きに片寄ったらせん構造を形成し、主鎖がメソゲンとして機能した液晶相を発現することを見い出した。SEC−MALS(多角度光散乱検出器)測定により計算された持続長は、ベンゼン、四塩化炭素等の非極性溶媒中では130nm、THF等の極性溶媒中では、20〜40nm程度であり、この剛直性の変化は、各溶媒中でのIRスペクトル測定により、隣接側鎖上のアミド基間の水素結合のON-OFFに由来していることを見出した。さらに、この水素結合の強弱によって、主鎖のらせん構造が反転することがCDスペクトル測定およびAFMによるらせん構造の直接観察より明らかとなり、X線構造解析によりこれら互いに逆巻きのらせん構造を明らかにした。(Figure 2)



3. 光学活性フェニルイソシアニドのらせん選択リビング重合と、発現するスメクチック相の発見

(J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 229-236; Macromolecules 2008, 41, 7752-7754.)

 動的らせん高分子と呼ばれる一群の高分子は、溶液中で右巻きと左巻きのらせんの反転が迅速に起こり、その協同効果により、ごく少量光学活性な部位を側鎖に導入するだけで、高分子全体を一方向巻きのらせん構造に変えることが可能なユニークな性質を有している。しかし、ポリイソシアニドに代表されるような、溶液中でも安定ならせん構造を有するポリマー(静的らせんポリマー)のらせん構造を、単一の光学活性体の重合によって作り分けることはこれまで不可能と考えられてきた。

 本研究室では、フェニルイソシアニド誘導体の重合を、アセチレンで架橋した複核の白金-パラジウム-μ-エチンジイル錯体を開始剤として用いて行なったところ、重合反応はリビング的に進行し、分子量の異なる右巻きと左巻きのらせん構造を有するポリマーが同時に得られ、これらが簡単な溶媒分別によって分離可能である事を発見した。また、得られた分子量分布の制御された右巻きと左巻きのポリマーのらせん構造をX線構造解析により明らかにし、それぞれがスメクチック液晶相を形成する事を見出した。(Figure 3)



4. 分子量の異なる棒状高分子の二成分混合系の示す多様な液晶相の発見

(Macromolecules 2009, 42, 3443-3447; Macromolecules 2010, 43, 5177-5179.)

 棒状分子のスメクチック相はほぼ分子長に等しい層間隔を持つが、分子長の異なる棒状分子を混合すると、分子長比、混合比に依存して非常に多彩な構造が発現する事が理論的に予測されている。応募者は、分子量分布を非常に狭く制御した分子量の異なるポリシラン二成分を混合すると、分子量比が1.7以上になると長い分子の一つのスメクチックレイヤーに短い分子のスメクチックレイヤー二つが入れ子になったスメクチック相が、分子量比が3.0以上になると長い分子の一つのスメクチックレイヤーと短い分子のスメクチックレイヤーが交互に積層したスメクチック相が発現する事を発見した。(Figure 4)



5. 剛直棒状高分子が形成するスメクチック相をテンプレートに用いたワイヤーグリッド偏光子の開発

 棒状分子と球状分子を混合すると、球状分子が棒状分子の形成するスメクチック相の層間に分離する(下図) [J. Phys. Soc. Jpn. 65, 3551 (1996)]ことが理論的に予測されている。本研究室では最近、分子量分布の非常に狭い、剛直棒状のらせん高分子であるポリシランの示すスメクチック液晶相において、単純に混合した様々な化合物がスメクチック相のインターレイヤースペースに分離集積して長周期構造を形成する事を初めて発見した。そこで、@棒状高分子のスメクチック相をテンプレートに用いて、マクロに分離する事を回避するために表面をアルカンチオールで被覆した金微粒子を1050 nmのメゾスコピック領域の間隔で分離構造形成させA液晶配向膜を用いて発現する構造を高度に配向制御して基板上に展開し、B基板上に並んだ金微粒子をナノ細線化し、C得られたフィルムのワイヤーグリッド偏光子(下図)としての光学性能を検討する、研究計画を立案、推進している。


このページの先頭へ

バナースペース

大越研究室

〒066-8655
北海道千歳市美々758番地65

TEL 0123-27-6084
FAX 0123-27-6084