1.剛直棒状高分子が示す、ネマチック、スメクチック、カラムナー相を含む液晶相転移の発見
(Macromolecules 2002, 35, 12, 4556-4559; Liq. Cryst. 2004, 31, 279-283.)
これまで、単純な棒状分子が排除体積効果だけで、ネマチック相やコレステリック相さらにはスメクチック相やカラムナー柱状相などの液晶相を形成し、段階的に構造発展する事が、力学モデルを用いた理論計算により予測されている。本研究室では、非常に剛直ならせん構造を形成する事が知られているポリシランやポリペプチドに、長鎖アルキル基を導入する事によりサーモトロピック液晶性を付与し、分子量分布を非常に狭く制御する事により、低温側からカラムナー相−スメクチック相−コレステリック相という、理論的に予測された相系列が再現する事を見出した。(Figure 1)
2.側鎖に光学活性アミノ酸残基を有するらせん状ポリアセチレンの示す液晶相の発見
(Macromolecules 2005, 38(10), 4061-4064; Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 8173-8175.)
らせん高分子は、立体的に込み合い、規制されたコンホメーションを取るために剛直棒状の形態を有し、このため主鎖全体がメソゲンとして機能し、液晶を発現することが知られている。応募者は、光学活性なアミノ酸からなる側鎖を導入したポリアセチレンが一方向巻きに片寄ったらせん構造を形成し、主鎖がメソゲンとして機能した液晶相を発現することを見い出した。SEC−MALS(多角度光散乱検出器)測定により計算された持続長は、ベンゼン、四塩化炭素等の非極性溶媒中では130nm、THF等の極性溶媒中では、20〜40nm程度であり、この剛直性の変化は、各溶媒中でのIRスペクトル測定により、隣接側鎖上のアミド基間の水素結合のON-OFFに由来していることを見出した。さらに、この水素結合の強弱によって、主鎖のらせん構造が反転することがCDスペクトル測定およびAFMによるらせん構造の直接観察より明らかとなり、X線構造解析によりこれら互いに逆巻きのらせん構造を明らかにした。(Figure 2)