理事長・学長挨拶
グローバル連携による高度DX・GX人材育成へ
本学は令和元年に公立化し、今年で7年目を迎えました。現在、本学では、大学院や学部の機能拡充を継続的に進めています。第1段階として、令和7年度から、大学院の修士課程(博士前期課程)の定員を20名から60名に増員し、1つの専攻の中に、DXコースとGXコースという専門領域のコースを新設して、新しい枠組みでの大学院教育と研究環境を整えました。現在、この機能拡充に対応した新たな施設の建設を計画中であり、新しい機能や環境の整備を進めています。
DXとは、Digital Transformation (デジタルトランスフォーメーション)の略であり、社会生活全般の効率化と高機能化のため、行政機能や企業において、様々な業務についてのDX化が進められています。また、小・中学校、高等学校や大学においても、教育の内容にDXに関連する情報科学の教育が強化されています。大学では、特に、数理科学、ビックデータ解析、人工知能(Artificial Intelligence, AI)に関する教育と、それらを活用した先端研究が進められています。一方、GXとは、Green Transformation(グリーントランスフォーメーション)の略であり、持続可能な社会の形成を目指し、そのための環境技術、新電力化技術、低消費電力化技術などを基盤として、調和のとれた複合技術の研究開発が進められています。特に、千歳市や北海道などは、雄大な土地と自然に恵まれていることを背景に、GX化を積極的に進めております。
千歳市とその周辺は、予想を超える変化をしており、本学の近隣に国家プロジェクトの1つとしてラピダスという次世代半導体の企業が進出しました。このプロジェクトは、単に次世代の半導体を作る製造拠点の支援という意味だけではなく、関連する様々な企業が周辺に集結しています。また並行して、次の世代を担う人材を育成するため、例えば、北海道では、経済産業省主導で北海道半導体人材育成等推進協議会が設立されるなど、高等教育機関に対する期待も日を追って高くなっています。
本学が公立化した際に、「異分野融合による教育・研究」を積極的に進めるため、「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」(文部科学省による認定制度)の科目を理工学部の全学教育に取り入れ、すべての学生がそれらの科目を学び、その後、応用化学、生物学、電子工学、光科学、情報科学、システム工学などの各専門分野での知識を習得する環境を整えました。令和5年3月には「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」を履修した最初の学部生が卒業し、令和7年3月には最初の大学院生(博士前期課程)が修了しています。
我々の周りで急速に成長している次世代半導体企業群は、それらの情報科学の技術を十分に使いこなし、その上で、材料科学、デバイス工学、電子工学、システム設計、機能集積システム開発などの研究・開発を進めています。さらに、北海道全域では、持続可能で豊かな社会を形成すべく、環境技術や新エネルギー技術の開発が進められ、様々な分野への導入が始まっています。また、国内外では、より高度な社会の実現を目指し、我々の生活を支援するロボット工学やディジタルツインを目指したサイバー空間技術、AIによる自動化技術などが広く普及してきており、本学が目指している「異分野融合による教育・研究」が、まさに「グローバル連携による高度DX・GX人材育成」へと変化しています。
本学では、積極的に海外の大学や研究機関との教育・研究の包括連携を増やしており、国際共同研究や、学生の海外派遣や連携先の大学からの受け入れを進めております。すべての学生が、これら広範囲にわたる最先端理工学の領域を学び、その中から自分に適した、自分が取り組んでみたい研究開発領域に進み、グローバル世界へのキャリア形成を実現するための多くの環境を整えています。
よりよい環境を目指し、常に最新の内容を取り入れるなど、地域社会と本学の持続的な発展を実現するため、日々取り組んでおりますので、引き続き、多くの皆様からのご支援、ご協力をお願いいたします。
公立大学法人公立千歳科学技術大学
理事長・学長 宮 永 喜 一
経歴
北海道大学工学部電子工学科卒業、北海道大学大学院工学研究科 学位取得(博士)
専門分野は情報科学、情報通信ネットワーク、マルチメディア情報処理
