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本学情報システム工学科齊藤大晶講師の所属する研究グループの論文が「Journal of Geophysical Research: Atmospheres」へ掲載されました。
2026.04.30
研究情報
本学情報システム工学科齊藤大晶講師の所属する研究グループの論文が「Journal of Geophysical Research: Atmospheres」へ掲載されました。
世界初!地上から「宇宙の境界」へ届く音をキャッチ
民間ロケットMOMO3により高度100km超でのインフラサウンド(超低周波音)の直接観測に成功
【研究のポイント】
1.民間小型ロケット「MOMO3号機」に搭載した圧力センサにより、地上から発せられた音源(打ち上げ花火)に由来するインフラサウンド(超低周波音)を高度100km以上にて世界で初めて直接検出
2.空気が極めて薄い中間圏(高度約50-76 km)や熱圏下部(同約106-109 km)でもインフラサウンドの信号が観測され、音波伝播シミュレーションなどの理論値ともよく一致した
3.火山噴火や津波、隕石爆発などで生じるインフラサウンドは、防災や環境監視の重要な観測対象であり、将来の災害監視や高高度大気観測に向けた新たな観測基盤となる可能性を示した
▲2019年5月に北海道大樹町(左上図)で打ち上げられた民間ロケットMOMO3号機に、検出帯域が非常に広いセンサ(INF03D)を搭載(右上図)。
世界で初めて高度100km級でインフラサウンドを直接観測した
【研究の概要】
公立千歳科学技術大学と高知工科大学の研究グループは、2019年5月、北海道大樹町でインターステラテクノロジズ株式会社が打ち上げた民間小型ロケット 「MOMO3号機」 に搭載したセンサ(INF03D)によって取得した圧力データを解析し、地上で打ち上げた花火に由来するインフラサウンド*1を「中間圏」から「熱圏下部」*2で直接検出しました。ロケットに搭載したセンサによって、地上起源の超低周波音が高度100 km級まで伝わりうることを直接観測した世界で初めての事例となります。
本研究では、高知工科大学の山本 真行教授らがMOMO3号機で行った実験で取得したデータを、公立千歳科学技術大学の齊藤 大晶専任講師(高知工科大学客員講師 兼務)が中心となって解析しました。MOMO3号機に搭載した広帯域差圧センサ INF03Dは、極めて低い周波数のインフラサウンドから可聴域に近い信号が検知可能で、 地上で打ち上げた花火を他の自然現象(雷など)と区別できる時刻既知のインフラサウンドの音源として利用しました。その結果、センサが上昇中の高度約50-76 kmで4つの明瞭な圧力変動を確認し、下降中の約106-109 kmでも弱い整合信号を検出しました。信号は3次元 ray tracing *3による到達予測と整合し、振幅も幾何学的広がりと周波数依存吸収を考慮した減衰モデルと矛盾しませんでした。
インフラサウンドは火山噴火、爆発現象、津波、ロケット打ち上げなどで生じる超低周波音で、防災や環境監視の重要な観測対象です。本研究は、災害起源の超低周波音が高高度大気をどう伝わるかを直接確かめる観測基盤を示し、将来の災害監視や高高度大気診断の高度化につながるものと期待されます。
▲上の図は、地上で打ち上げた花火の超 低周波音が、大気中を伝わってロケットの飛行経路と交わる様子を計算した図。
黒線が MOMO3 の軌道、色線が音の伝わる経路、赤点がロケットで信号を捉えうる位置を示す
【研究の背景】
インフラサウンドは20 Hz未満の超低周波音で、火山噴火、隕石爆発、津波、核実験監視、ロケット打ち上げなどの検知に利用されています。音波の伝わり方は気温や風の鉛直構造に敏感なため、中層大気や熱圏下部を探る手段としても注目されています。しかし従来は地上観測網が中心で、高高度大気を伝わる音波をその場で直接測ることは困難でした。そこで本研究では、100 km級まで到達するロケットを用いて、地上起源インフラサウンドの高高度伝播を直接検証しました。
【研究の内容】
本研究で用いたデータは、2019年5月4日に北海道大樹町で行われた MOMO3号機の実験で取得されたものです。MOMO3号機には検出帯域 0.1-1000 Hz の差圧センサ INF03D が搭載され、ロケットは最高高度113 kmに到達しました。地上では花火を22発打ち上げ、音源時刻と位置を明確に設定しました。
今回の論文では、研究グループが NRLMSISE-00、HWM14、JAWARA、ERA5、MERRA-2 の各大気モデルを用いた3次元 ray tracing により、音波到達時刻とロケット軌道の時空間的一致を評価しました。その結果、上昇中の T+120.8、122.5、149.0、151.1 s の4ピークは花火由来と確認され、下降中の T+268.9 と 276.2 s の弱いピークも限定的ながら整合する信号と解釈されました。
さらに、観測振幅は幾何学的広がりと高高度での周波数依存吸収*4を考慮した単純な減衰モデルで概ね説明でき、観測信号が実際に高高度まで伝わったインフラサウンドであることを支持しました
【研究成果の意義と今後の展望】
本成果は、地上付近で発生したインフラサウンドが中間圏から熱圏下部まで伝播し、その信号をロケット搭載センサで直接検出できることを示した最初の例です。地上観測網や気球観測だけでは捉えにくい高高度大気中の音波伝播を、その場で直接観測できる可能性を示しました。
火山噴火や津波など大規模災害に関連する 超 低周波音を将来より高精度に解釈するうえで、本研究は基礎となります。災害起源インフラサウンドの伝播理解を高める観測基盤として、防災監視の高度化に貢献することが期待されます。
今後は、より 超 低周波音に最適化 した音源や観測システム、高精度な大気場推定、複数プラットフォームの同時観測を進め、防災観測や惑星探査への応用を目指します。
【用語解説】
*1)インフラサウンド
人の耳では聞こえにくい20 Hz未満の超低周波音。火山噴火、爆発、津波に伴う大気の揺れ、ロケット打ち上げなどで発生し、遠くまで伝わります。
*2)中間圏から熱圏下部
地表からおよそ50 km以上から100 km前後にかけての高高度大気。高度55km以上へは気球では届きにくく、直接観測が難しい領域です。
*3)ray tracing
大気中の温度や風の分布から、音波がどの経路を通ってどこへ届くかを計算する手法です。
*4)周波数依存吸収
音波の弱まり方が周波数によって異なる性質で、一般に高い周波数ほど減衰しやすく、低い周波数ほど高高度まで届きやすいとされます。
【論文情報】
タイトル: First Detection of Firework-Generated Infrasound in the Upper Mesosphere-Lower Thermosphere With a Rocket-Borne Sensor: Results From the MOMO3 Sounding Rocket Experiment
著者 :Hiroaki Saito, Yusuke Yasukouchi, Takamasa Hiratsuka, Masa-yuki Yamamoto
掲載誌: Journal of Geophysical Research: Atmospheres
掲載情報: Volume 131, Issue 8, April 2026
DOI : https://doi.org/ 10 .1029/2025JD045676
【お問い合わせ先】
公立千歳科学技術大学 研究支援課 研究支援係
TEL :0123-27-6044
E-mail :kenkyu@photon.chitose.ac.jp
高知工科大学 入試広報部 広報課
TEL :0887-53-1080
E-mail :kouhou@ml.kochi-tech.ac.jp